給料の基準
こちら北海道の田舎町。
どこで働いても、給料は15万円か20万円くらいです。
介護は特に少ない印象があって、手取りで15万円もない人が多いです。
もちろん都会と比べると経済的な格差もありますが、まわりの経営者たちがそのくらいだからと、その辺りを基準に考えている経営者が多いからです。
今から20年前ですから、もうひと昔以上前の話になりますが、近郊にフラノデリスというお菓子屋さんがあって、そこの社長さんと講演会で一緒になる機会がありました。
控え室で経営談義になったのですが、当時ネットで大きな売り上げを出していたうちと、北海道物産展や通販で全国的に有名になったフラノデリスさんの「売れたきっかけ」を話し合ったりして、とても有意義な待ち時間でした。
色々な話の中で一番衝撃を受けたのが、「社員の年収は600万円を目指している」ということ!
富良野なら年収300万円でも募集をかければたくさん応募が来るはずです。
首都圏から「富良野でお菓子屋さんを出す」と決めて北海道に移り住んだ方なので、働くスタッフの人件費の低さに驚いたことでしょう。
経営者としての志の高さにビックリして恥ずかしくもなりました。
それから僕の中で、従業員に支払う給料の基準はずいぶんと変わりました。
フラノデリスの藤田社長の経営はとにかく原価計算が細かい。
24時間交代制で工場を稼働しているのですが、徹底的に効率化しています。
それとプラスして販路が地元ではなく本州、しかも各都市の一流百貨店がメインなので商品単価も高く設定できます。
今は販売業であれば当たり前にネットで全国のお客様に向けて販売を行っています。賞味期限の短い商品でなければ世界中に販路を拡大できます。環境としては当時よりも実現しやすいです。
従業員への給料は、経営者が独断で決めれる数少ない項目です。
うちの従業員の給料を年収600万円にすることは未だに至っていません。そんな簡単ではありませんが、その日から今までずっと意識しています。
少なくとも周りの低水準に右へ倣えで甘えることは間違いだと思っています。
経営者の諸先輩と話して勉強になる事は多々あっても、感銘を受けることって振り返ってみると数えるほどです。僕は特に青年会議所や同友会などは参加しないタイプだったので、地元の経営者さん達と知り合う機会が少なかったのも一因かもしれません。その分本州の経営者さんたちとたくさん会ってきましたので、それなりには会ってきたと思います。
25年振り返って、感銘を受けた人は3名です。(不感症なのか感動が薄いのかはわかりません笑)
いつも経営者としての見本としてきました。決断に迷った時、あの人だったらどう考えるかなと自問してきました。
こうした先輩に出会えた事は本当にラッキーでした。
不思議なことに、出会うタイミングで出会うんだなとも実感します。
日々、切磋琢磨してぜひあなたも素敵な出会いをして欲しいです。
首都圏と地方
独立前の会計事務所時代に担当していた企業の中に、本州の大手鉄鋼会社に製品を製造販売している企業がありました。地元の工業団地に工場を20個以上構えていました。
顧客は神戸製鋼や日立などの日本を代表する大企業ばかりです。
とてつもない大きさの水道管や大型の部品がメインでした。
どうして北海道の片田舎の工場に発注するのか。
納品時の輸送コストだけでも大型の製品ですから莫大です。
社長の営業力はもちろん素晴らしいのですが、大企業側のメリットはなんだろう。
はじめて社長と会った時に聞いてみました。
答えは簡単で、人件費が首都圏の二分の一以下、製品保管の地代が首都圏に比べたらただ同然。
設計や研究に携わる高収入の従業員が担う発注はまた別で、あくまでも組み立てに近い工程のみです。なるほど。工程ごとにサプライチェーンを分けて効率化しているわけです。
日本にいながら中国やベトナム並みの格差があるんだと実感しました。
北海道で生まれ育ったことに誇りを持っていたのでショックでした。
しかしこれは前述のフラノデリスのケースとは違います。
この場合、従業員の給料を上げるためには従業員の努力が不可欠です。
製品の設計から完成までの過程に高単価の部門は存在しています。工場を建て、スタッフに社宅を用意しても同じように格安で済むので、地域的なイニシアチブはあります。賃金と地代に着目して大手から受注した社長は凄いです。条件は整っています。スキルや資格を従業員達が積極的に勉強して、全国にあるサプライチェーンの仲間入りをすることです。組み立ての工程よりも高い報酬の仕事を受注すればいいのです。
日本全国のスペシャリストとの競争になりますから、もちろん簡単ではなく先行投資も多大になります。時間もかかりますし、食い込める保証もありません。
足元を見れば、組み立ての工程であっても日々改善して進化しなければ、いつ他の企業に発注を持っていかれるかわかりません。この企業は、現在請け負っている部門に集中していて、これはこれで地元に大きな貢献を果たしていましたし、ビジネスモデルとして示してくれていました。
ちなみに地元の銀行からこの企業への貸付金利は0%でした。
毎月動く取引額が地元ではいかに巨額だったかということです。
地域格差をニュースなどでよく耳にしますが、思った以上の格差が存在しています。
あなたがこの企業の経営者でしたら、目標をどこに決めてどういった経営をするでしょうか。